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コラム

在庫管理編

第1回 『ヘドロ在庫をなくせ!』

在庫管理編

皆さん始めまして。アットストリームの中平です。この1年弱の間、殆どの方々は過剰在庫に苦しみ、必死で在庫の削減を行ってきたことと思います。ただ、今一度考えてみてください。全品目の在庫が満遍なく、同じ割合で減少したでしょうか。在庫削減を行っている中で、「減らしやすい在庫」と、「減らない在庫」が分かれていたかと思います。そこで本コラムではこれから数回にわたり、皆さんが悩んでいる「減らない在庫」に関して焦点を当て、「溜まらないようにするにはどうすべきか」、数回に渡り説明していきます。

減らない在庫は「ヘドロ」と同じ

次のような現象が一つでもおきている会社は、「ヘドロ」といわれる不動在庫を大量に抱えている可能性が高いと考えます。ただその会社はヘドロ在庫問題に立ち向かうことで在庫が減るだけでなく、会社のものづくりの悪さ加減そのものを根本から治すことが出来ます。
      • 在庫は沢山あるのに、なぜか欠品、納期遅れが多発する
    • 毎年、不動在庫を処分(廃棄)するのにまた、増える
    • 倉庫が在庫で一杯になったが、必要なものが無い
    • 先入れ先出しが出来ない、どこに何があるのかわからない
    • 生産管理担当者は毎日遅くまで残業している

「在庫を減らせ!」と、在庫が諸悪の根源のように言われます。その一方「在庫を減らせば納期遅れや、生産遅延、果ては工場稼働率が落ちる。だから在庫は減らせない」とも言われます。確かに在庫を減らそうとすると納期遅れのリスクが高まります。うまく経営するには「理不尽な要求に合理的に対応する」ことが求められるのです。
ところが実際には多くの会社が在庫の実態さえ把握できていません。問題だ、問題だ、と叫んではいますが、本当の問題を把握しているケースは本当に少ないのが実状なのです。

在庫は結果であって原因ではない

在庫はものづくりの良し悪しを測定する鏡だといわれてきました。少ない在庫で生産・出荷できていれば、それはものづくりの仕組みが良い証拠です。在庫が多ければそれはものづくりのしくみが悪いということです。しかし、実は在庫は結果であって原因ではないのです。「在庫が諸悪の根源」のように言われますが、実は在庫自体は何も出来ません。手を打てるのは「在庫になる原因」に対して、なのです。
在庫は単純な「足し算と引き算」で計算できます。その理屈はきわめて単純です。製品在庫を考えてみましょう。製造実績で50個増え、販売実績で30個減るとすると、月末在庫は差し引き20個の在庫増です。在庫増の原因は製造が作りすぎたのか、それとも販売が売ることが出来なかったのか。それとも来月用に20個の在庫を積み増そうとしたのか。在庫は様々な活動の結果であって、原因ではありません。在庫増減には多くの原因が考えらます。たとえば「部品在庫増」であれば、

      • 他の部品の納入遅れにより、出庫が出来なかった
      • ロットで購入しているので入庫時には数か月分の在庫が一時に入る
      • 生産計画の変更により、今月は必要なくなった
      • 前月在庫の数量が間違っており、コンピュータから発注された余分な数量が納入された
      • 先々の部品の品切れを心配して在庫を意図的に積み上げた
      • クレームによる設計変更で旧品を大量に引き取った  など・・

です。
このようにして在庫がたまるのだから、在庫増は結果であって、原因ではありません。原因を取り除かないと在庫問題は無くなりません。

 ヘドロ在庫という言葉を知っていますか

ところで、みなさんは自社の在庫を分析したことがありますか。
たとえば部品メーカーの場合、部品とか半製品で保有在庫のうち20%が何らかの原因ですぐには活用できない不動在庫だとしたら、あなたの会社は病んでいると言えます。
大量流動品は大量に入庫して大量に出庫します。多少在庫がたまっても数日ではけてしまうし、完成品メーカーが生産をやめるまでは、在庫が廃棄損になるリスクは小さいのです。
一方、倉庫の中には大量の不動在庫が潜んでいます。様々な種類の素材や部品が少しずつ溜まり、いつの間に無視できない量に達してしまうのです。それで総在庫を減らそうとすると益々使える在庫が減って生産・出荷が窮屈になります。これがヘドロなのです。
ヘドロはヘドロと認定すれば即座に浚渫(廃棄)しなければいけません。ヘドロはいつの間にか溜まります。だからヘドロが再び溜まらないしくみを構築し、組織的に運用して成果を上げることが重要です。 川の流れにたとえれば、ヘドロは川底にたまって水の流れを悪くしている悪さ加減の蓄積です。水面は大量流動品が勢いよく流れているが、川底に行くほど少量流動品(もしくは流動しない)の流れは徐々に悪くなっていきます。殆どの経営者や管理者は水面から見渡せる限りの現象しか把握していないから、勿論ヘドロは見えません。一度仔細に川底を除いてみると、流れが留まり全く動いていない素材や部品が大量に溜まっていることに気づくのです。
ヘドロ在庫問題を抱える会社の特徴は、生産管理担当者が日々の業務処理に忙殺され、疲弊していることです。生産管理担当者は「在庫を減らせ」の号令の下に、即効薬である大量に流動している製品の在庫削減に手を付け、その結果、生産予定は狂い、納期問題が発生して調整作業が増え、益々苦しくなって、日々のオペレーションに追われ、何も改革の手を打つことができなくなっています。そして時々たまらなくなってヘドロの浚渫を行い、捨てる(廃却損が発生)。また捨てた翌日よりヘドロが溜まり・・という繰り返しが毎年行われています。
悪さの原因は、長期滞留しているいわゆるヘドロ在庫を分析してみると明らかになります。ヘドロ在庫は作らないようにしなければいけません。今、この瞬間にもヘドロは溜まっているのです。ヘドロを溜めないためには、ヘドロができる要因をしっかりと把握し、それに対する対策を講じる必要があるのです。 大量のヘドロを抱えていては、厳しい競争に勝利することは困難です。ヘドロ在庫問題の解決はサプライチェーン競争を勝ち抜く最短距離を示しています。
これから数回に渡り、「ヘドロ在庫が溜まらない仕組み構築」の処方箋に関して、本コラムにて紹介を致します。

第2回コラム「敵(ヘドロ在庫)に立ち向かう前に、敵を知る」に続く

東洋ビジネスエンジニアリングのものづくりデジタライゼーション
杉原 健史 氏
杉原 健史 氏
株式会社アットストリーム マネジャー
(株)第一勧業銀行、キーエンス、アーサーアンダーセンビジネスコンサルティング等を経て、現在に至る。KPIマネジメントによる経営改革の推進、各種SCM改革の企画・立案・実行支援などの各種プロジェクトに従事。主な著書に『SCP入門』(共著)工業調査会、『e生産革命』(共著)東洋経済新報社。
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※(株)アットストリームの杉原氏に、直接メールで連絡を取ることができます。
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株式会社アットストリーム
最もクライアントに信頼されるブティックコンサルティングファームを目指し、2001年に設立。
現在、東京・大阪・名古屋・上海・米国に拠点を置き、グローバル製造業を対象としたサービスを本格展開。
実践力を持つ専門人材(生産系・会計系・ IT系・マーケティング系)が融合してプロジェクトを編成し経営課題の解決を推進する。
特に、数多くの企業で実践、成果を上げている生産分野の業務改革支援は、現場での根気強い取り組みと豊富な実績で定評がある。
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