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コラム

生産海外移管戦略編

第4回 『多種少量品(Cグループ品)の増大がコスト構造をかえる』

生産海外移管戦略編

工場はもう一つ大きな、そして根本的な問題を抱えています。それは「Cグループ製品の増大」です。顧客の欲求や要求が高くなり、マーケットが多様化して製品が多品種化した、というのはよく言われる話ですが、実際はそれよりもはるかに大きな問題が存在しています。いかにマーケットが多様化しようとも、商品企画、開発、マーケティング、営業という企業活動をする限り、売れないものの販売を継続することは利益にはなりません。ここでの問題は、いつのまにか多品種化して、生産現場以外、その会社の誰もほとんど関心を示さなくなった商品が未だに生産されているということです。
たとえば、顧客から依頼され生産している製品Xが、10年前の売り出し時には月産平均2万個あったとします。当時は設備もほぼ占有し、連続生産することができました。その後、何度かのリニューアルを重ねましたが、今では月産平均1000個です。あくまで平均であって、2ヶ月に1度くらいの生産頻度で、その時の生産個数は500個だったり、1000個だったり、時には3000個の注文が入ることもあります。
生産時には金型を準備し、整備し、材料を準備し、生産条件を整える必要があります。つまり生産の都度「準備・段取」が必要になります。10年前には1回の段取時間が2時間で、生産は1週間連続で行われました。
しかし今では、1回の段取時間が短縮され1.5時間になってはいますが、生産時間は5時間。段取時間の比率は10年前は5%未満でしたが、現在は1.5時間/(1.5時間+5時間)=0.4、つまり、現在は40%にもなっているのです。それでも、取引先からの単価は変わりません。
「商売だからそのような製品の生産も行わなければならない」ということなのですが、よく調べてみると、そのような製品が全体の製品数の60~80%を占めていることはよくある話です。しかし、ほとんどの企業がその実態を把握していないことによって、大きな改善機会を失っています。

Cグループ品は無管理状態

多くの企業がこのような忘れ去られた製品には関心を示さず、一体どのくらいそういう製品があるのか、生産とか原価に及ぼす影響をほとんど把握していません。
その原因は次のようにいくつかあります。

      • 売上が小さくなったので、管理リストの「その他」の項目にまとめて入れるようになった。
      • 少なくなっていく製品だから、これを専門に担当する人がいない。
      • 問題化しようとすると営業交渉の問題になり、最終的には製造コストのさらなる低減を求められるので、賢いスタッフと管理者は避けて通る。
      • 何よりも、原価表を見るとコストはそんなに悪くない。

このようにCグループ製品の問題は大きいにもかかわらず、「触らぬ神にたたりなし」で誰も手をつけようとしません。しかし、それが中国への生産移管を契機に大きな問題として浮かびあがって来るのです。
量産品を海外に移管した場合、Cグループ品のみが国内に残ります。「国内工場は多品種少量の高付加価値生産に特化する。それしか生き残る道はない」。そのような管理スタッフの無責任な戦略により、現実離れした生産活動が行われているのです。

原価管理の見直しが必要

原価管理の持つこのような問題を根本的な問題としてとりあげ、挑戦している企業もあります。しかし、多くの企業で原価管理の制度を見直そうという活動は遅々として進んでいないのが現実です。
「長年の懸案である原価管理に取り組めば、一生そこから離れられない。若手のやることではない」とか、「原価管理に取り組めば今までのデータとの乖離が明確になり、販売上も生産上も、今までのレポートの真偽のほどが問題になり、収拾がつかなくなる。次の世代で取り組んでほしい」などと、たいがいの管理者は考えています。そのもとは、経営者を説得できない、自信がない、承認を得られたとしてもうまくいくかどうかわからない、また、うまくでき上がっても誰も喜ぶ人がいないということを知っているから、誰も進んで手をつけようとしません。
したがって、この問題は経営者の問題としか言いようがありません。特に中堅企業の経営者はこの問題をクリアーすることによって、きわめて戦略的な判断をすることができるようになります。儲かっていない製品、儲かっていない工場、儲けさせてくれない顧客に対して正しく、強力な対応をする、そのための判断材料がもたらされるのです。
何はさておいても、自社の生産品目がどれくらいの数量で生産されているか、その生産ロットはいくらくらいか、段取と生産時間の関係はどのくらいになっているか、そして、儲かっているのかどうかを調べてみることが重要です。このような調査を行った結果、ほとんどの企業で、思ってもいなかった事実に直面して唖然とすることとなります。

Cグループ品対策=掘れば大きな利益が見込める

多くの経営者が生産移管問題に取り組むときに、Cグループ品に目を向けることによって、大きな利益改善のネタがあることに気づきます。このCグループ品への対応抜きに生産移管を検討することは、大きな経営判断ミスをすることにつながります。
Cグループ品対応は、生産配分・生産移管の最大の課題です。Cグループ品のコストを正確に計算するためには、従来の間接費の配賦の繰り返しではなく、実際に段取時間の比率が増えることによって原価が変わるロット別原価計算をする必要があります。製造指図に基づいてロット毎に準備・段取時間が異なり、生産ロットの大きさで稼働時間が異なり、さらに後始末時間がかかることを原価に反映させる必要があります。
Cグループ品の管理に目を向け、その管理の仕方によっては、管理不在のため埋没していた莫大な利益を獲得することができる可能性がでてきます。
たとえば、住宅設備用の部品を生産しているX社の本社工場では段取に1時間掛かります。一方同じ段取に中国にある同社の工場では半分の30分です。理由は簡単で、日本では人件費が高いので段取作業を1人で行っているのですが、中国工場では3人で「組み作業段取」を行っているからです。
組み作業段取とは、段取時間短縮のために、たとえば、金型を取り付ける人、材料を入れ替える人、加工条件を設定する人など、同時に段取作業を行うことをいいます。当たり前の方法ですが、ここ数年の間に、国内工場ではCグループ品の比率が高くなり、人員削減の中で組作業段取の人員が確保できず、段取時間の比率が高いにもかかわらず組み作業ができなくなっているのです。
人件費の安い中国工場で組作業段取を行い、Cグループ製品を生産することによる効果は絶大、ということになります。量産品は中国でという常識にもかかわらず、現実は、「Cグループ品は中国でないとできない」状況になっているのです。常識は常識ではなくなっており、逆にAグループ品を日本で生産することの優位性も同じく否定できません。
日本の企業はAグループ品を海外に出した後で、国内工場の競争力を評価しています。しかし再度、移管問題を科学的に分析・評価・判断することによって、勝てる生産移管戦略が生まれるのです。

Cグループ品は無管理と無責任から生まれる

Cグループ品がなぜできるのかを考えてみると、次のようないくつかの理由が考えられます。
顧客の理由としては、

    • 当初売れていた製品が売れなくなってきた。しかし販売を打ち切りにはしていない。これには企業の事情、営業の売上増進という事情がある。
    • 金型などの投資は終えているのだから、あとは変動費のみで最終商品ができるのであれば負担は少ない(これはアセンブリ型の会社に多いタイプである)。
    • 購買部門は「必要なものを安く早く調達する」ことが使命だから、Cグループだからといって、やめると言える立場にない。

このようにして、取引の長い取引先ほどCグループ品が多くなっていきます。また、自社では、

  • 長い付き合いの中で売れるものも売れないものもあるが、全体では上得意様だと考える。
  • 受注活動をしているときに、「生産量が少なくなったので価格を上げてください」とは言えないという営業の事情がある。
  • もっと基本的には、製造と営業および企画部門との間でCグループ品の損益について議論したことがない(これはほとんどのケースである)。
このような顧客側の事情と自社の営業の事情によって、経済合理性に欠ける状態がいつまでも続いているのです。
では、次回のコラムでは、製品損益と工場損益に着目した生産移管の考え方についてお話したいと思います。

第5回コラム「製品損益で考える/工場損益で考える」に続く

世界で戦う準備はあるか
杉原 健史 氏
杉原 健史 氏
株式会社アットストリーム マネジャー
(株)第一勧業銀行、キーエンス、アーサーアンダーセンビジネスコンサルティング等を経て、現在に至る。KPIマネジメントによる経営改革の推進、各種SCM改革の企画・立案・実行支援などの各種プロジェクトに従事。主な著書に『SCP入門』(共著)工業調査会、『e生産革命』(共著)東洋経済新報社。
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※(株)アットストリームの杉原氏に、直接メールで連絡を取ることができます。
渡邉 亘 氏
渡邉 亘 氏
株式会社アットストリーム マネジャー
TIS株式会社を経て、現在に至る。製造業における業務改革の推進、生産ならびに収益管理システム構築の企画・立案・実行支援、情報システム運営の構造改革立案・実行支援など、各種プロジェクトに従事。
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※(株)アットストリームの渡邉氏に、直接メールで連絡を取ることができます。