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コラム

設計・生産連携編

3回『設計上流からのBOM活用』

設計・生産連携編

CADとBOMの連携

ITによる部門・拠点横断のインフラを構想する時に、一度入力された情報の転記や重複登録は極力排除することを想定されると思います。いわゆるリユース・リワークレスによってデータフローの川上からシームレスに情報を流そうという指向です。
では、設計から生産に至る製品情報の流れ、いわゆるエンジニアリング・チェーンにおいて、最初に製品情報がデジタルデータとして登録される川上ツールは何でしょうか? 組立型製造業においては、言うまでもなくCADになります。製品構成情報の源流であるCADデータはエンジニアリング・チェーンの起点と位置付けられます。
にもかかわらず、多くのPLMシステムにおいて、CADとBOMの連携は軽視される傾向にあるように感じます。設計途上の構成情報はCADからCSV出力されたエクセルデータで個人管理され、品目マスタデータとは切り離された状態で運用されている例は枚挙にいとまがありません。
「CADは技術管理部の管轄なので、情報システム部門としては手を出しづらい。」
「将来的にCADシステムを変えるかもしれないので、あえて連携していない。」
「CADとBOMではユニット構成のくくり方が違うから。」
理由を伺うと様々な答えが返ってきますが、合理的な判断として納得できるものかというと疑問を禁じ得ません。いずれにしてもこの状態は、"システム的に"あるべき姿ではないと言えます。
ただ、この一面だけで捉えると、「それでも仕事は回っているからいいんじゃないの」というレベルの結論になってしまいます。BOMとCADが繋がっていないために生じる本質的な問題は、別にあります。過去の実績情報やコストを意識することなくCAD上での新規設計行為にのみ没頭してしまうことと、仕掛り段階の設計情報を可視化できないことです。すなわち、設計上流段階からBOMを活用してバリエーション展開、標準化推進、原価企画を実施していくという観点では、CADと連携していないことは重大な問題になるのです。
これまでPLM導入時の構想では描かれるものの、実装においては敬遠されてきたCADデータから生産手配への一気通貫の流れを実践するには、連携ではなく双方のデータを融合するアプローチが必要になります。

3DデータとBOMの融合

CADデータと融合したBOM運用について、当社の「visual BOM」を例にしてご紹介します。「visual BOM」ではメカCADとの連携インターフェース及びBOM上での3Dビジュアライズを実現する技術として、ラティス・テクノロジー社のXVL (http://www.xvl3d.com/) を採用しています。XVLは市場に流通している主要な3DCADデータを、データポータビリティを向上する超軽量データに変換する、高圧縮技術が特徴のフォーマットです。当社はこのXVLデータを介してCADデータをBOM情報として取得するアダプターを、ラティス・テクノロジー社と共同開発しました。アセンブリデータは、それを構成するパートに"バラし"、個々のパートごとにXVL形状データを再生成します。その際、中間アセンブリについても同様の処理を行いますので、フラットにバラされるわけではなく、組構成(親子関係)は維持されます。この組構成はCAD上で入力された材質などの属性情報と共にBOMデータとして「visual BOM」にインポートされますが、品番が付与されていないパートにはBOMシステムが自動的に仮IDを割り付けて構成を定義します。
この仕組みを使うと、BOMと同一フレームワーク上にXVL形式の3D形状データが表示され、全てのパート・アセンブリにおいて相互参照(クロスプロービング)を行うことが可能になります。このように品目の属性情報として3Dデータが存在し、D-BOM(仕掛り)段階においても構成管理できる点が、従来のPLMシステムとは大きく異なるところです。

図1:各種BOMの比較

<図1:各種BOMの比較>

図2: BOMとXVLの相互参照(クロスプロービング)<図2: BOMとXVLの相互参照(クロスプロービング)>

コンフィギュレータによるCADレス設計

また、複数のBOMを、共通部・バリアント部・オプション部として構造化し、共通要素と差異要素が一覧でマトリクス表示できるビューも用意されています。コンフィギュレータと呼ばれるこの機能は、単にBOMを横並びで見るだけではなく、アセンブリを任意に組み合わせて新たな製品構成を作成することが可能です。企画量産型製造業においては、ボリュームゾーン向けに激増するバリエーション展開時に活用されることを想定しています。また、個別受注型製造業においては、引合い見積作成における運用が効果的と考えられます。
このコンフィギュレータをBOMファンクションのみで実装している例もありますが、それでは限定的な効果しか得られません。「visual BOM」では構成の組合せにより製品レベルのXVLデータを動的に自動生成したビジュアル情報がここに加わります。これにより、バリエーション間で"どこが違うのか"だけではなく、"どのように違うのか"まで即座に把握することが出来るようになります。更に干渉チェックや空間距離計測など、3Dデータだからこそ可能な検証機能を活用することで、CADレス設計をも実現することができます。XVLという超軽量データであることから、設計部門以外の方がこのコンフィギュレータを運用することも可能です。例えば引合い見積を営業の方がコンフィギュレータで作成し、生成されたXVLデータで顧客に完成イメージをプレゼンするのも有効でしょう。

図3 : コンフィギュレータと空間距離検証<図3 : コンフィギュレータと空間距離検証>

このような業務効率化効果もさることながら、ビジュアライズされたバリエーション管理の真の狙いは、コストダウンに対するアプローチの変革にあります。これまで設計段階における原価改善は、材料変更や工法変更のような単品コスト視点からのみ実施される傾向にありました。しかし、わずかな仕様違いで似たような形状の部品を新設していては、その都度設計費や金型費、検証費、管理費が発生してしまいます。これではグローバルに対抗しうるコストダウンや納期短縮は図れません。BOM情報だけでは把握できない部品の類似性は、形状データと結びつくことで初めて抽出が可能になります。今後は直接費だけではなく、製品横断レベルでの種類コストダウンや納期短縮も勘案した標準化推進活動へとシフトしていくべきであると考えます。
BOMを単なる手配システムではなく、事業戦略を推進する上での支援ITと位置づける運用例の一つとしてご参考になれば幸いです。次回は、BOMの生産連携についてご説明致します。

第4回コラム「グローバルコミュニケーションとERPとの高度な連携」に続く

第4次産業革命の本質を踏み外すな、成果を得るにはまず設計と製造の壁を破れ
尾関 将 氏
尾関 将 氏
株式会社図研プリサイト
取締役 営業部長
1994年に図研入社。一貫して営業畑。入社から4年間はCADを販売していたが、PDM事業のスタートに伴い異動。以降、現在に至るまでPDM/PLMソリューションのセールスに従事。日本の製造業がかつて以上の強さを取り戻すことを信じ、その黒子として貢献することをモチベーションにしている。 https://www.presight.co.jp/