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海外進出企業とタックス・ヘイブン対策税制について【連載第3回】管理支配基準の判例について(安宅木材事件2/3)

海外進出企業とタックス・ヘイブン対策税制について【連載第3回】管理支配基準の判例について(安宅木材事件2/3) 

本シリーズの内容は、筆者が昨年、税務専門誌である税務研究会発刊「月刊税務QA」(平成26年2月号と3月号)に特別寄稿として執筆・掲載された内容を、要約及び再構成したものです。

<法令略称>

措法:租税特別措置法、措令:租税特別措置法施行令、措通:租税特別措置法関係通達 

東京地裁における課税当局(被告)の主張

課税当局は措通66の6-16の内容に従って、香港法人であるALH社は管理支配基準の要件を充足していないものと主張しています。

(1) 取締役会及び株主総会の開催場所について
   ALH社の取締役会及び株主総会は、すべて原告(ALH社の親会社であるA社)の
   本店所在地(日本)で開催されていた。

(2) 役員としての職務執行場所について
   ALH社の取締役4人は、いずれも親会社A社の役員と兼務であり、香港に在住して
   ALH社の常勤取締役であったのはM1名であった。

(3) その他の状況について
   ① ALH社の業務の実態について
     南洋木材の購入の窓口の名義はALH社になっていたが、取引条件の交渉、
     輸送業務、クレーム処理などはすべて原告A社が行っていた。ALH社は原告の
     指示に従い、南洋木材の売買契約の締結、代金の決済、差金と称する金員の
     支払いなどを行っていたに過ぎない。
   ② 業務の数値管理について
     シッパーに対する南洋材の買入債務、前渡金、差金の残高等、各シッパーと
     ALH社の債権債務をノートに記帳し管理していたのは原告A社であった。
   ③ 役員人事について
     ALH社の役員の人事は、すべて原告A社の取締役会で審議・決議されていた。
     かつ、その取締役会にはALH社常勤取締役(香港在住)のMは
     出席していなかった。
   ④ 役員給与の改定について
     ALH社常勤取締役Mの給与改定は、原告A社の社内稟議で決裁されていた。
   ⑤ 事務所賃借に伴うコスト発生の意思決定について
     ALH社の運営に伴う重要なコスト、例えば、事務所の借り換え、
     新事務所の内装などについては、その都度ALH社から原告に対して
     稟議の申し出があり、原告のもとで決裁されていた。

東京地裁における原告(A社)の主張

(1) 取締役会及び株主総会の開催場所が日本であったこと及びALH社の常勤取締役がM1名に過ぎなかったことについて

原告「(このような状況は、)子会社において常態ともいうべき事態であって、これにより管理支配が否定されるとすれば、およそ子会社については管理支配基準を充足することはなくなるものといわなければならない」と主張しており、子会社では当たり前のことと、これは半ば、開き直りに近い状態と言えるかもしれません。

(2) ALH社の業務が原告の指示のもとに行われていたに過ぎないことについて

原告「ALH社の業務は、原告の木材輸入の取引に必要なサービスを提供することにあり、貿易取引の実質的な主体は原告であるから、取引に必要な書類の作成、代金の決済、融資に関する手続きをALH社が原告の指示に従って行い、また、輸入船積みの手続き、クレーム処理、シッパーに対する債権債務の管理を原告が行っているのは当然のことである」とし、ALH社の業務は木材の卸売業というよりも貿易のサービス業であり、この観点からALH社が原告の指示を受けて業務を行っていたとしても、ALH社の香港における業務の独立性に影響を及ぼさないと主張しています。

次回は、これら被告である課税当局と原告の主張に対して、東京地裁がどのような判断を下したのかを見て行きたいと思います。

第4回コラム『管理支配基準の判例について(安宅木材事件3/3)』に続く

漫画_世界で闘う準備はあるか
高田 正昭 氏
高田 正昭 氏
公認会計士・税理士 (株)グローバル・パートナーズ・コンサルティング取締役
税理士法人グローバル・パートナーズ 代表社員
帝京大学経済学部教授
上場製造業、監査法人等を経て現在に至る。主に法人を相手に税務業務に従事している。特に最近はクロスボーダー取引及び組織再編成税制に係る税務相談が増加している。 株式会社グローバル・パートナーズ・コンサルティング http://www.g-pc.co.jp/