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アジア諸国における会計及び税務制度 【連載第1回】ベトナム会計及び税務制

アジア諸国における会計及び税務制度 連載第1回ベトナム会計及び税務制 

皆様はじめまして。BDO税理士法人においてアドバイザリー部門の顧問をしております永田ゆかりと申します。2014年までベトナムの会計事務所にてジャパンデスクのダイレクターとして勤めていました。今号では、現地での実務経験を元に、ベトナムにおける会計・税務の基本的な事項についてお話させて頂きます。

1.会計・監査

ベトナムでは、現在、VAS(ベトナム会計基準、Vietnam Accounting Standard)のみが認められており、外資系企業は年に一度、VASで作成された財務諸表の監査が義務付けられています。VASはIFRS(国際会計基準)を基本としており、会計上の基本的な考え方はIFRSと同等であり、VASにおいて、未整備な部分についてはIFRSを考慮する形がとられます。VASとIFRSの大きな差異として、有形固定資産を一例として挙げると、VASでは減損が認められないこと、取得価額に資産除去債務は含まず、借入費用も原則費用処理をすること等があります。実務上、多くの日系企業は、VASに基づく財務報告書だけではなく、日本本社の管理等のためJGAAP(日本会計基準)やIFRSに基づく財務報告書を必要とします。このため、VASからIFRS等異なる基準への組み替えが必要になり、多くの日系企業が当該業務を現地会計事務所及び監査法人に依頼しています。

監査に関しては、前述した通り、外資系企業であれば年に一度の法定監査が義務付けられています。但し、設立初年度においては、15か月までであれば、初年度として監査することが可能です。また、会計年度ですが、3の倍数月(3月,6月,9月,12月)で自由に選択が可能であり、多くの日系企業は3月或いは12月を決算期にしています。また、ベトナムでは、基本的な帳簿さえ備えていない企業が未だに多くあります。この問題の多くは単式簿記になっていることが原因であり、現金の収支を記録しているのみの会社も多いです。そして、極端な例として財務活動に係る内部統制がほとんど存在しない企業もあり、グループ会社の管理という面ではベトナム企業の希薄なコンプライアンス意識は大きな問題になります。

2.税務

法人所得税

法人所得税は外資誘致の狙いもあり、2014年より22%に引き下げられました。法人所得税に関連する留意すべき事項として、ベトナムの費用項目に関する損金不算入の取扱いが挙げられ、現地から日本への出張関連費用などには特に注意が必要です。ベトナムでは費用を損金に算入にするためには、関連当局への抗弁のため様々な証憑をルールに従ってしっかり文書化し、保管しておく必要があります。そして、これら書類の整備については現地事情をよく知る税理士法人や監査法人の助言を必要とする部分が多くあります。また、ベトナムの外資系企業が社内規則の整備に大きく手間取る事項として、ベトナムから日本他海外へ出張した場合の費用や給与手当等があげられ、これらは現地での税務調査でも調査対象となることが多い事項でもあります。

個人所得税

個人所得税に関しては、日本同様、居住者・非居住者の概念があります。しかし、ベトナムの居住者認定基準を誤解している方が非常に多く、本来居住者であるにも関わらず、居住者としての申告・納税をしなかったことによって、追徴課税が発生することがあります。過去には、ベトナムにて日本払い給与の申告、納税を行っていなかった日本人に対し、約1000万円を超える追徴課税が発生した事例もありました。また、非居住者であれば個人所得税が課税されないと誤って理解している方もおり、非居住者には非居住者の申告・納税方法が存在することにも注意が必要です。

ご参考までに、ベトナム国内法の規定では、以下に当てはまるものを居住者としています。

  • 暦年で、ベトナム国内に183日以上滞在する者(入国初年度は、暦年ではなく最初の入国日から365日で計算されるため、例えば2009年10月1日~2010年4月30日まで滞在した場合は、それぞれの暦年では183日未満ですが、居住者扱いとなります。また、入国日と出国日は各1日として計算されます。)
  • ベトナム国内に定常的な住居を有する者
ここでの定常的な住居は以下となります。
  1. 恒久的住居(外国人の場合、Residence Cardに登録された住居)
  2. 課税年度で、契約期間が183日以上の賃貸住宅等(ホテル、事務所、作業場を含み、契約の名義が個人であるか法人であるかを問わない)
上記に当てはまらない者は非居住者となります。ただし、2013年6月27日付政令Decree 65/2013/ND-CPにより、外国人がベトナムで183日以上の賃貸契約を所持するものの、暦年でベトナム滞在日数が183日未満である場合は、当 該外国人が外国での居住を証明できれば、ベトナム非居住者として認定されます。また、ベトナム現地法人が出張者に対し、ホテル代、タクシー代などの出張に伴う費用を負担しなければ納税義務は出張者個人に帰属しますが、ベトナム現地法人が関連費用負担した場合は、それらは出張者の給与としてみなされ、ベトナム現地法人が源泉義務として申告するよう税務調査で指摘される場合があります。

近年、ベトナムにコスト削減を目的として進出する会社が多くありますが、実際は、駐在員のフリンジベネフィット(住宅費、子女教育費等)やインセンティブ(ハードシップ手当等)などを考えると、その駐在員を日本で勤務させている場合の2,3倍のコストがかかる場合が多くあります。このため、現地の税制を考慮した慎重なシミュレーションやタックスプランニングに基づき進出計画を策定することが重要です。そして、これら計画を慎重に策定することにより、予期せぬ個人・法人双方への経済的不利益を防止することができます。

なお、駐在員については、日越租税条約に短期滞在者となる者の所得税の免税措置に関する規定が設けられており、以下3つの条件を満たせば当該規定が適用されます。

  • 暦年内のベトナム国内の滞在期間が合計183日以下である
  • 当該滞在者への給与はベトナム法人またはベトナム国内の恒久的施設からは支払われていない
  • 当該滞在者への給与の負担もベトナム法人またはベトナム国内の恒久的施設により行われていない

しかし、上記免税規定を受けるためには事前申請が必要であり、各種書類を、契約履行開始(実際は入国時点と考えられる)前までに提出する必要があります。この手続きは煩雑であり、多くの場合は書類の申請について専門家に相談し対応しています。なお、現在においても、法人所得税、個人所得税及びその他の税に関してベトナムの税務制度は運用が不透明な部分が多く、税務調査官との交渉等も含め専門家の支援が必要というのが実態です。

第2回コラム『ベトナム移転価格税制』に続く

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永田ゆかり 氏
永田ゆかり 氏
BDO税理士法人 アドバイザリー部門 顧問 早稲田大学トランスナショナルHRM研究所 招聘研究員 http://www.bdotax.jp/