第3回 なんとその数736種類。膨大な整理からはじまった帳票のIT化
活動の進め方
同社の社内で、製造部門のチェックシートを集めてみると、なんとその数736種類。
設備点検のみならずすべてのチェックシートや点検表、その数736種類を全て可能な限り数値化する見直しをし、同時に当社はこの要件を満たすITツールを見つけるために奔走していた時期です。その時点でユーザーは何を感じていたのでしょうか・・・。
実際のユーザーの目線から・・・
プロジェクトスタート後、736の帳票のすべてを見直しました。
正直言って、こんなにあるのか・・・というのが本音でした。こんなに人の手を介して点検しているにも関わらず、その工数と見合う活用が出来ていないことに愕然としたというべきですね。数値化を進めている中で、本当にこの点検は必要なのか?どういう形で記録しておくべきか?など、単に紙をITに変えるだけではなく、そもそも論の議論が出来たことは大きな収穫でした。
ReMさんからは、ちょうどこの見直しをしている最中にITツールの紹介を受けました。iPadにインストールされた点検アプリを使って点検を行い、そのデータをデータベースに格納していくという提案でしたが、聞きながら「これなら、やりたいことができる」と確信しました。紙の点検表を集め、EXCELに入力するタイムラグもなく、iPadから送信すればすぐにデータ化される部分も魅力でしたし、内蔵カメラで故障個所の撮影ができるのも分かりやすい。
できれば、この点検作業を人間が行わず、機械が自動で出来れば100点!と言った覚えがありますが、あの時代には難しかったのかもしれません。今ならばIoTで実現できると思いますが・・・。(佐野氏)
佐野氏の言うとおり、iPad+点検アプリの組み合わせは結果的に同社の業務に上手くマッチしたというように感じています。iPadが発売になってからまだ一年経っていなかった当時ですが、スマートデバイスの利点、つまり非常に直感的に操作できる部分が、トライアルで導入した際の製造現場からも「これまでとあまり変わったことを意識しない・スッと馴染んだ」という声が上がったこともあり、トライアルから数週間で同社は約30台のiPad導入を決定し、プロジェクトは本稼働へ向かいました。
落とし穴にハマらないために
このプロジェクトスタート開始から、点検表の見直し、iPad導入までを約3ヶ月でやり切った同社は、いよいよ点検のIT化をスタートさせますが、この時プロジェクトが意識していたのは「まずは、やってみよう」「大きな効果でなくても、素早く成果を感じるように」という2点でした。同時に、落とし穴にハマらないようにということを非常に意識してプロジェクトを進めていました。
当社の考えていた落とし穴とは・・・
- いつまでの石橋を叩いているうちに、推進力が無くなって、やる気がなくなる=ダレる
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- 大きな獲物を狙いすぎて、いつまでの効果を出せず失速してしまう=いつまでも達成感がでない
逆にプロジェクト側からは・・・
- 絶対に途中で飽きずに我々がフォローするのできちんと参加してほしい
- どうしても内部(仲間)で進めていると甘えがでてくるので、そこを外部の立場で締めてほしい
実際のユーザーの目線から・・・
本稼働開始時にReMさんにお願いした2点は、高い確率で発生する落とし穴と考えていました。どんな素晴らしいシステムでも、正しく使うようにフォローしなければ、いつの間にか使われなくなり、元の業務に戻っている例は日本中にあると思います。当社でもそういう事例は山ほどありましたので。
ですので、私が責任を持ってフォローするので、きちんと参加してほしいという点は強くお願いしましたね。スタート以後約3年間、毎週木曜日の10:10から50分フォロー会を実施し、点検が正しく行われたのか、修正してほしい点はないのか、データの分析と対処などのフォローをし、時にはもっと便利な使い方ということで他の用途のアプリの紹介もReMさんにしてもらい、引き続き前に進むよう苦心しました。
同時に、毎朝の朝礼で点検実施状況の報告をさせ(稼働後6年以上経過している今も行われている)、前日点検内容の報告・全部署共有をさせています。このフォローのおかげで、朝礼では異常や予期せぬ変化という新鮮な情報を新鮮なまま共有でき、週次のフォロー会では、傾向分析や予知・予防保全の議論という深掘りした情報活用ができるようになりました。(佐野氏)
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