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第5回 海外工場で「事実」を把握する難しさ

第5回 海外工場で「事実」を把握する難しさ

前回のコラムで予告させて頂きました通り、IoTを東南アジアで導入したケースを今回ご紹介します。
今回ご紹介する導入先は日系自動車部品サプライヤー(Tier1)で、日本国内以外にタイと中国に工場を進出しているグローバル規模の日系製造業です。
同社には既にタイ国内で20年以上操業しているタイ本社工場(以後「本社工場」)がありましたが、増加する受注に対応するために新工場を稼働させ、従来の本社工場で前工程・新工場で後工程と分けることを決断しました。

具体的には、本社工場で前工程まで完了した半製品を移送し、新工場で後工程を完成させ製品出荷を行うという一連の流れとなります。
本社工場と新工場は約80Km離れた場所にあるものの、同社は生産管理システムのバーコード付きの現品票で製品管理を行っており、製品の製造実績や在庫数などはほぼリアルタイムに生産管理システム上で把握できる仕組みがありますので、物理的な距離は業務上問題ありません。
工場運営は日本人工場長ではなく、タイ人工場長が工場オペレーションを行いますが、同社での経験も豊富、製品づくりも熟知しているのでその部分も問題ないと判断し、操業を開始しました。

1:実態把握の難しさを生む、コミュニケーションの壁

しかし、実際にこの体制で操業を開始してみると、製品出荷=出来高が計画通りに上がらず、出荷がギリギリ、納期遅延を寸前で回避するという状況が頻発してしまいました。

早速、生産管理システムを分析すると、前工程(本社工場)からは計画通りに移送しているにも関わらず、製品出荷が計画通りに行われていないことが判りました。つまり後工程(新工場)が計画通りに操業できておらず問題のボトルネックになっているようです。

当然、日本人駐在員が新工場に再三訪問し現場を確認しますが、新設の生産設備は問題もなく動いており、作業者の動きも見ている限り問題なし、出来高も順調に上がってきています。もちろん生産管理システムへの実績登録も問題なく行われていました。
「設備も人も問題なく動いているように見えるのに、出荷がギリギリになるのはなぜだろう…」
タイ人工場長に状況ヒアリングをするものの、思わぬコミュニケーションの問題が露呈します。お国柄もありタイ人工場長は無意識に怒られないように…という思考をしているのか、こちらは事実を知りたいのに、何となく言い訳のような回答が返ってきてしまい、客観的な事実を掴むことがなかなか前に進みません。
この辺りのやり取りは通訳を介して行われたものの、通訳の伝わり方ひとつ、言葉の選び方ひとつで返答がガラッと変わってしまう「コミュニケーションの難しさ」が障害になった例と言えると思います。

2:情報不足が疑心暗鬼を呼ぶ「負のスパイラル」

ここまでの状況を整理すると…
  1. 見ている限り設備は順調に稼働している。
  2. 見ている限り出来高も計画通り出来ている。
  3. 話を聞いても、今一つ実態が掴めない。
  4. しかし、結果的に出荷はギリギリで納期遅延寸前の状態。

これらを総合すると「見ていない時にサボっているのではないか」という疑念が日本人駐在員の中に浮かんできました。要するに、見に行った時は一生懸命やっているが、見ていない時や夜勤時はサボっている…だから出来高が上がってこないのではないか。
事実が分からない中で断片的な情報に接している結果、この想像がにわかに信憑性を帯びてきてしまいます。実際に日本本社を交えた経営会議の席では「新工場のタイ人工場長を変えるべき」という過激な意見も出てきてしまいました。

サボっているのではないかと疑念はあるものの、長年このタイ人工場長とは共に働いている日本人駐在員の中にはそんなことないという気持ちも当然存在しています。想像や日本人目線での議論ではなく、新工場の稼働状況を24時間取得して事実に基づいた分析を大至急行わなければならないというのがタイ本社の結論でした。

3:とにかく早く・安く!

新工場の各設備にPLCが搭載されていれば、プログラム開発を行うことで設備の稼働状況を捉えることが出来ますが、新工場の設備のPLCは各設備の制御には用いられているものの、工場全体として情報収集を行う全体を管理するための仕組みは構築されていないことから、稼働状況の見える化のためには、①:新たなPLCの購入、②:PLCの制御プログラムの設計・プログラミングが必要となりますが、これには相当の費用と時間が必要になり、早期にこの問題を解決するには時間も費用も掛かり過ぎてしまいます。

このような状況下で白羽の矢が立ったのがmcframe SIGNAL CHAINでした。
mcframe SIGNAL CHAINは、各設備に搭載されている信号灯(アンドン)の点灯状態を自動取得し、データとして記録され、管理画面上で分析できるIoT製品です。
とにかく簡単に、すぐに(しかもお安く)設備の稼働状況の見える化をしたいと熱望していた同社には最適な製品でベストマッチと言っても過言ではありません。

見積を取ってみると、PLCと比べて約10分の1の費用で導入が出来、その上設置期間も既存の信号灯にポン付けするだけという簡単さで、1~2日で完了し即日データ取得ができるとのこと。設備稼働状況取得やIoT化というプロジェクトはどうしてもコストも期間も大きくなってしまい、ざっくばらんに言えば「すぐに効果を出すには重厚長大で現実離れしてしまう」ものでしたが、mcframe SIGNAL CHAINはそれを現実的なものにする製品でした。
その証拠にmcframe SIGNAL CHAINの想定効果と見積を受け取った本社工場の工場長は、その日のうちに発注を決めたというくらい魅力的なものだったのです。

次回はこのmcframe SIGNAL CHAINを実際に設置し問題解決に至った事例と、そこからの学びをご紹介させて頂きます。

第1回目から読む場合はこちら

mcframe SIGNALCHAIN事例
安東 恭二 氏
安東 恭二 氏
株式会社ReM 代表取締役 株式会社エイ・ジー・エスコンサルティング、ピーシーデポコーポレーション等を経て、2007年株式会社ReMを設立。顧客からのフィードバックを織り込んだ「本当に使える」ITと現場を融合させた業務改善サービスを提供している。 「格好良さ・目新しい機能のような味の濃い改善ツールではなく、十年使っても飽きないコメのような改善手法」を顧客と一緒に考えるのが得意分野。 http://www.re-m.jp/