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コラム

グローバル製造業の原価管理

第8回「グローバル原価企画の課題と取組の方向性」

はじめに

第5回のコラムでは、グローバル展開した製造業における原価情報活用の課題として、「グローバル原価管理」、「連結収益管理」、「グローバル原価企画」の視点で整理しました。今回はその中の「グローバル原価企画」の課題について検討します。

1. グローバル原価企画で何が問題になっているか

原価企画は製造業にとって重要な業務の一つです。「設計段階で原価の80%が決まる」と言われるように、原価企画段階で製品の収益性の大部分が規定されてしまうので、原価企画は製造業が利益を出す上での生命線と言っても過言ではありません。そのように重要な業務であるにもかかわらず、原価企画担当者の属人的なエクセルワークになっているという企業はまだまだ多いのが実態です。

国内中心にビジネスを行っていた時代は、営業部門、設計部門、生産部門、原価企画部門が物理的に近接しており、エクセルワークでも大きな支障はなく、むしろ柔軟性があって対応しやすかったかもしれません。しかし、営業、生産がグローバルに広がっている現在においては、特に顧客要求にスペックインしなければいけないB2B製造業では、このような状態がビジネス拡大の阻害要因になってきています。

例えば、ある日本の自動車部品メーカーが、国内ビジネスでは成長に限界があるので海外自動車メーカーとのビジネスを開拓・成長させたいとします。そこで、ドイツ販社がドイツメーカーに営業活動を行い、何とかRFQ(見積依頼書)を頂くことができました。しかし、欧州工場で生産してはコスト競争でコンペに勝てないと判断し、タイ工場やインドネシア工場で生産しようと考えます。ところが、ドイツ側ではタイ工場やインドネシア工場の設備状況やコストテーブルが分からない、タイ工場やインドネシア工場側ではドイツメーカーのRFQの各項目にどういうロジックで何を入力すればいいかが分からないという問題が発生します。この問題を解消するために拠点間で何度もコミュニケーションを取り、ようやくRFQに回答できるようになった時には既に時間切れという事態が起こっています。図表1のような問題構造が発生しているのです。

表1:グローバル原価企画の問題構造表1:グローバル原価企画の問題構造

        ※ Q:Quality(品質) C:Cost(費用) D:Delivery(納期)

 

2. 問題解決への取り組み例

前述のような問題構造を解決するために、図表2のような取り組みを行った事例があります。

 

表2:グローバル原価企画の問題解決例イメージ表2:グローバル原価企画の問題解決例イメージ

 

実現したいことは、どの製造拠点であっても、そのコストテーブル(原材料・部品構成と単価、工程別チャージレートとST:標準作業時間、など)が可視化されていて、それをもとに客先RFQフォーマットにマッピングができ、しかも実績原価と比較することにより目標原価・見積原価との乖離要因を把握して原価低減活動や次回以降の原価企画にフィードバックできるということです。

そのため、各製造拠点の原価見積方法、実績原価の算出方法、並びに客先RFQフォーマットを調査し、あるべきコストテーブルを定義し、グローバル原価データベースを構築するということに取り組みました。あるべきコストテーブルに対応できていない製造拠点に対しては改善ポイントを明確にし、改善計画に合意して、その進捗管理を行うということも並行して実施することが必要です。

このような取り組みに当たって留意すべき事項としては、必ずしも全てが実績値を取り込む必要はないということです。例えば、チャージレートの実績値は操業日数や稼働率によって月次ではかなり変動するため、実績値を用いるよりも予定チャージレートを使う方が合理的なケースもあります。そうだとすると、加工費部分については予算時のコストテーブルやSTを年に1回取り込むだけでよく、製造拠点側の対応ハードルも比較的低減することができます。逆に、設備情報については、加工可能な部品の範囲や設備投資の必要性を判断できなければならないため、加工能力、生産能力、稼働率など比較的詳細な情報を保持しておかないと役に立たないということになります。

最近では、BOM連携やBOP(Bill of Process:製品を組み立てる時の部品ごとのプロセスフロー)機能によって原価企画・原価見積にも対応できるPLM(Product Life cycle Management:製品ライフサイクル管理)のパッケージ製品も出てきていますので、そのようなパッケージ製品も検討しながら、自社の状況に応じたグローバル原価企画の仕組み作りに取り組まれてはいかがでしょうか。

第1回目から読む場合はこちら

いまさら聞けない原価管理入門
森本朋敦 氏
森本朋敦 氏
PwCコンサルティング合同会社 パートナー
コンサルティング業界で通算24年の業務経験を有し、自動車業界、機械業界、化学業界、食品業界など、主に製造業における原価管理・原価企画、経営管理を中心としたコンサルティングに従事。公認会計士。 https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/member/consulting.html