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コラム

安全文化醸成により労働災害を減らす方法

【第2回】見えない安全文化を見える化する「安全文化診断」

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※本コラムは2023年2月28日開催セミナー「安全文化醸成により労働災害を減らす方法とは」の内容を編集したものです。

前回は安全文化とは何か? それを可視化するための8軸モデルについてお話ししました。今回は、この8軸をさらに詳しく分析して、安全文化の見える化を可能にする「安全文化診断」についてご紹介します。

安全文化診断とは? 実施のポイント

安全文化診断は、慶應義塾大学大学院・高野研一教授の監修のもとで構築されました。80問の設問に答えていただき、回答の傾向を分析するものです。設問は組織事故の共有要因を8軸で整理した「8軸モデル」を基に構成されており、組織全体や部門別などで、安全文化がどのような状態にあるのか、8軸のどの観点で対応が必要なのかなどが視覚的に把握できるものです。

この診断は開発段階で約1万件のデータで研究論文が発表されていて、その後、国内にあるほぼすべての電力関連事業所をはじめ約100社に実用展開されています。
安全文化診断結果
<図4>安全文化診断結果
 
図4は実際の事故発生件数と安全文化診断の結果を設問ごとに並べたものですが、安全文化診断の結果が悪いほど(赤が多い)事故発生件数が多く、結果が良いほど(青が多い)事故発生件数が少ないことが読み取れ、事故発生件数と安全文化診断の結果に相関があることが分かります。これは事業所や部門ごとの安全文化の状態が見えるだけでなく、その部門や業種における安全文化の8軸についてどこが強くどこが弱いのかを比較して、強い軸を伸ばして弱い軸に力を入れることができます。

図5は一例ですが、8軸それぞれをレーダーチャートに配することで具体的な数値を比較することができ、強みや課題を洗い出すことが可能になります。こうして自社の部門間だけでなく、他業種や規模別での比較をすることで、自社が置かれている状況を客観的に捉えることができるようになります。
安全文化診断と業種別比較
<図5>業種別比較

また、拠点別やライン別で比較した場合について見てみましょう。例として図6をご覧ください。これは4つの工場を比較したものです。青に行くほど優れていて赤に行くほど劣っているという評価になりますが、ひと目で青が多いA工場がベンチマークとなることが分かります。反対にB工場には赤が目立ちますので「課題あり」と考えられます。

次に8軸項目で比較してみましょう。8軸項目としては全体的に「相互理解」が低いことがわかります。そこで相互理解BランクであるA工場と、EランクであるB工場の「相互理解」に対する施策の違いを深掘りし、A工場はどんな手が打てているのか、B工場では何ができていないのかを確認することで、具体的な打ち手が見えてくるのです。
拠点・ライン別比較
<図6>拠点・ライン別比較

階層別に見てみると、図7では一般職員と役職者の間にギャップがあることが分かります。特に相互理解については、係長・主任以上がすべてAランクなのに対して、一般職員はEランクであり、ギャップがとても大きいことがわかります。このことから具体的な打ち手として、社内のコミュニケーションに関わる現状把握と対策が必要であることが見えてきます。

階層別比較

<図7>階層別比較

このように安全文化診断を実施することで、安全文化醸成のための課題が明確になり、どのような手を打てば良いかが見えてくるのです。

では、実際には安全文化醸成のためにどのような「打ち手」があるのでしょうか?

次回は安全文化醸成のための具体的な「打ち手」についてご紹介します。

【第3回】安全文化醸成のために有効な「打ち手」例に続く

永尾 大作 氏
永尾 大作 氏
株式会社ジェック コンサルタント
電気工事士、施工管理技士の資格を有し、これまで多くの安全管理者に対しての教育を実施し、安全意識の醸成、安全教育のレベルアップをご支援しています。理系ならではのロジカル思考と、常にポジティブな姿勢で、現場の行動変容に定評のあるコンサルタントです。
https://www.jecc-net.co.jp/