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コラム

安全文化醸成により労働災害を減らす方法

【第3回】安全文化醸成のために有効な「打ち手」例

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※本コラムは2023年2月28日開催セミナー「安全文化醸成により労働災害を減らす方法とは」の内容を編集したものです。

ここまで安全文化の概要と安全文化診断の活用法などについてお伝えしてきましたが、ここからは安全文化醸成のための具体的な「打ち手」についてご紹介します。

安全文化診断の結果から導き出される打ち手

安全文化診断を行った結果から課題や弱点が見つかりますが、その傾向別に対策例を並べたものが図8です。例えば、「組織統率が低い」という傾向があれば、「経営トップから『安全最優先』のメッセージを継続的に発信し、浸透を図る」といった対策が考えられます。

安全文化醸成の打ち手例

<図8>安全文化醸成の打ち手例

ここでポイントとなるのは、リレーションの基盤では人の意識に働きかけるため、「ノンテクニカルスキル」が重要であり、オペレーションの基盤においてはマンネリ化・陳腐化しやすいため、常に「最新の情報を取り入れ、更新する」ことが重要となってくるということです。

特にオペレーションの基盤は課題が明確になるので、ルールの策定や安全装置の導入など対策を立てやすいのですが、それだけではその対策の効果は短く、長期的に見ると有効性が薄れてきます。そのため、オペレーションの基盤をしっかりと確立した上で、中長期対策としてのリレーションの基盤を整備することが必要になってくるのです。

このコラムではリレーション基盤における「ノンテクニカルスキル」を活用して、いかに人に働きかける打ち手があるのか、についてご紹介しましょう。

安全プレゼンテーションで「想い」を伝達する

リレーション基盤における安全文化醸成のために、4軸に共通する項目を抜き出して対策を考案した時、効果的なものの一つに「安全プレゼンテーション」があります。これは朝礼やKY活動の場面などで、企業や組織が示す「安全方針」や「行動指針」とともに、自分の安全に対する「想い」をのせて、周囲に浸透・伝達する、という方法です。
安全プレゼンテーション
<図9>安全プレゼンテーション

安全プレゼンテーションを行う際に押さえるポイントは、まず安全管理者の「リーダーシップ」が重要なカギとなるということです。安全管理者が強いリーダーシップを持って安全文化醸成の機運を高めることが、周囲を巻き込んでいきます。そして、本気の「想い」こそが人を動かすことを意識し、「言う」のではなく「伝える」ということです。

朝礼における安全活動やKYミーティングなどは長年続けていると、どうしても「不変の課題」のようなテーマとなってしまい、毎日「題名も変わらなければ、中身も変わらない」という内容に陥りがちです。しかし、毎日同じ安全方針であっても、毎回「本気」で、「言うのではなく伝えていく」ことで、必ず「想い」が伝わり、人の行動変容を促すことに繋がります。

もちろん、常に災害事例など最新の情報を共有し、安全方針なども常に更新をしていくことが前提です。少なくとも年一回はしっかりと更新をして周知していく必要があります。

しっかりと準備をした安全プレゼンテーションはリレーション向上のために有効な対策です。

実際にどのように安全プレゼンテーションを実施すれば良いのか、一例を上げましたので参考にしてください。

安全プレゼンテーションの実施例

<図10>安全プレゼンテーションの実施例

例は朝礼の場合です。冒頭の挨拶や用件などは各企業や組織によって異なると思いますが、その次に会社としての安全に関わる方針や考え方を説明し、安全方針を全員で唱和するなどをします。その際に安全管理者から、「安全を守る意味についてしっかりと自分の言葉で想いを伝える」ことがとても重要となります。

意味を伝えるのはもちろん、管理者としての姿勢を明確にすることも大切です。例えば実際の安全プレゼンテーションにおいて、ある現場の管理者の方は「私は不安全行動を絶対に許さない!納期と安全のどちらを取るかと言えば、必ず安全を取ります」と責任者の姿勢を明確にしていました。

また、「私は皆さんの命を守ります。皆さんを現場からご自宅に無事故で送り返すのが私の使命なのです」とご自分の想いを伝えた管理者の方もいます。こうした管理者一人ひとりの姿勢や想いは必ず現場に波及し、確実に安全文化の醸成に結びついていくのです。

さらに参考として、図11に安全プレゼンテーションを行う上での留意点や実施のタイミングを示します。

安全プレゼンテーションのポイント<図11>安全プレゼンテーションのポイント

実施の留意点のうち、特に重要なのが「伝えることを意識した話し方」です。これには一方的に話し続けるのではなく、例えば「ナンバリング」や「PREP話法」などのコミュニケーションスキルを活用するといいでしょう。

ナンバリングは、「これから3つのポイントについてお話しします」や、「今日はこの1点だけ覚えておいてください」などのように、あらかじめ話の内容をナンバリングして提示することで、聞き手の考えを整理しながら伝える方法です。またPREP話法はP:ポイントを話した後に、R:理由(Reason)とE:例え(Example)を示し、もう一度P:ポイントに戻るという話法で、話を整理するとともに聞き手の集中力を維持させることに有効です。

また、実施のタイミングとしては安全方針などが変更される期初などに行うのはもちろん、労働災害やヒヤリハットなど安全に関わるインシデントが発生した場合には必ず実施します。もちろん、毎日の朝礼でもいいですし、月例の職長会など、それぞれの職場の実情に合わせて折に触れて実施していくと効果的です。

ここまで安全文化醸成のための「打ち手」をご紹介してきましたが、その最大のポイントは「全社員が当事者意識を持つ」ことに尽きます。次回は、「全社員が当事者意識を持つためには」何が必要か、についてご紹介します。

【第4回】全社員が当事者意識を持つために何をすればいいか?に続く

永尾 大作 氏
永尾 大作 氏
株式会社ジェック コンサルタント
電気工事士、施工管理技士の資格を有し、これまで多くの安全管理者に対しての教育を実施し、安全意識の醸成、安全教育のレベルアップをご支援しています。理系ならではのロジカル思考と、常にポジティブな姿勢で、現場の行動変容に定評のあるコンサルタントです。
https://www.jecc-net.co.jp/